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吉田松陰 日本救国の天使 (4)

吉田松陰 日本救国の天使(4)

 

松下村塾の目的とその教育

 

ところが、こういう立派な国柄をもつ日本を欧米列強は狙っている。 植民地、 従属国にしようとしている。 いまだかつてない国難です。 日本人としての自覚と誇りを持つものは、 天皇国日本を守り抜くため欧米の侵略を打ち(はら)う志を固め立ち上がらなければならない。 これが 「攘夷(じょうい)」 です。 攘夷というのは自分の国の独立を断固として守るということです。 民族自衛の精神と行動、 それが攘夷です。 この 「尊皇」 と 「攘夷」 の精神があったからこそ、 日本は有色民族中ただひとつ奇蹟ともいうべき明治維新を成し遂げ、 西欧諸国の侵略を阻止することが出来たのです。

 

吉田松陰は、 松下村塾の目的を書いた「松下村塾記」に次のように記しています 。

 

(そもそ)も人の最も重しとする所のものは君臣(くんしん)()なり。 国の最も大なりとする所のものは()()の弁なり。 今天下はいかなる時ぞや。 君臣の義、講ぜざること六百余年、 近時に至りて華夷の弁を合はせて又(これ)を失う。 (しか)(しこう)して天下の人、まさに安然(あんぜん)として計を得たりとなす。 神州の地に生まれ、 皇室の恩を(こうむ)り、 内は君臣の義を失い外は華夷の弁を(わす)れば、 (すなわ)ち学の学たる所以、人の人たる所以、其れ安くに在りや。

 

人の最も大切なことは君臣の義、 つまり天皇と国民との間の正しい道 (これが忠です)、 秩序を守ることである。 国の最も大切なことは、 日本と外国との国のあり方の違いを知ることである。 ところが君臣の義は長く教えられず、 今はさらに日本の誇りさえも失おうとしている。 日本人はすべて皇室の恩を受けているのに、 君臣の義を失い日本の国の尊さを忘れるならば、 どうして人として日本人として正しい道を踏むことができるだろうか。 それゆえ松下村塾では、 君臣の義を学び、 天皇国日本の尊さを学ぶのだと言っているのです。 これが松下村塾の目的です。

そしてもう一つ、 松下村塾の教育の根幹にあったのが、「士規(しき)七則(しちそく)」の教えです。  武士が踏むべき道を説いたもので七つありますが、 ここでは三つほど紹介します。

 

一、   (およ)そ生れて人たらば宜しく人の禽獣(きんじゅう)に異なる所以(ゆえん)を知るべし。 蓋し人には五倫(ごりん)あり、 (しこう)して君臣(くんしん)父子(ふし)を最も大なりと()す。 (ゆえ)に人の人たる所以は忠孝(ちゅうこう)(もと)()す。

 

人として生まれたからには、 人間が動物とは違う存在理由を知らなければならな い。 人には守るべき五つの道 (君臣・親子・夫婦・長幼(ちょうよう)朋友(ほうゆう)の間において人間が踏むべき正しい道) がある。 その中で最も大切なものは、 君臣の道と親子の道で ある。 従って、 人として最も大切なことは、 天皇への忠であり親への孝である。 吉田松陰は、 人間に一番大切なことは忠と孝であると言っているのです。 戦後の教育の中で全く無視し否定されてきたのが忠と孝です。

 

一、   (およ)皇国(こうこく)に生れては宜しく()宇内(うだい) (世界) に尊き所以(ゆえん)を知るべし。 (けだ)(こう)(ちょう) (皇室) は(ばん)(よう)一統(いっとう) (万世一系) にして(ほう)(こく)士夫(しふ)世々(よよ)(ろく)()()ぐ。 (じん)(くん)民を養いて(もっ)祖業(そぎょう)()ぎたまい、臣民(しんみん)(きみ)(ちゅう)して以て()()()ぐ。 君臣(くんしん)一体、 忠孝(ちゅうこう)一致、 (ただ)吾が国を(しか)りと()す。

 

天皇国日本に生れたならば、 なぜ日本が世界の中で類いなく尊い国であるかの理由を知らなければならない。 皇室は万世一系にして常に国民を大切にされ、 国民は常に天皇に忠義を尽くし父祖の踏んできた道を守ってきた。 君臣が一体で、 忠と孝が一致するのは日本だけである。

吉田松陰は、 この短い文章の中で日本の国のあり方、 歴史と伝統を端的に言い切っています。

 

諸外国では、 王室は革命などによって倒れ、 同じ王室は続いていません。 ですから、 君臣一体と忠孝一致とが成り立たないのです。 父親が忠誠を尽していた国王が革命によって殺された場合、 今度その息子が忠誠を尽すのは、 父親が忠誠を尽していた国王を倒したかつて家来であった新しい国王です。 だから忠と孝とは一致せず、 君臣一体にならないのです。

  

一、   ()の道は()より大なるはなし。 義は勇に()りて行われ、 勇は義に因りて(ちょう)ず。

 

武士にとって一番大事なことは正しい道、 道義(どうぎ)を踏むことである。 義は勇気によ って行われ、 また勇気は正しいことを行うことによってさらに強くなる。 つまり義と勇は表裏一体だと言っているのです。

このように、 松下村塾には確固たる教育方針がありました。 それは人が人として守るべき道であり、 天皇陛下に忠誠を尽くすという日本人の根本の生き方です 。