昨年6月、経団連の提言で自民党の保守系議員以外が「選択的夫婦別姓」に舵を切ったように思えたのですが、ぎりぎりの3月にその経団連が発していた「女性が被っていた同姓使用による問題点」のほとんどが解決済であったことが明らかになってしまいました。「選択的夫婦別姓」を推進しようとしていた政党・議員そして経団連にとっては突然梯子を外された現在の状況を産経新聞が記事にしています。
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〇🔗<独自>自民党地方議員の75%は「旧姓の通称使用の法制化」主張 森山幹事長も「驚き」
"今国会の焦点とされる選択的夫婦別姓の導入の是非を巡って、自民党の都道府県議や政令指定都市の市議の75%が旧姓の通称使用の法制化を求めていることが22日、分かった。全国の地方議員を対象に「『旧姓の通称使用』の法制化を求める地方議員の会」(会長・松田良昭神奈川県議)が実施した署名活動で判明した。”
""地方議員の会は21日、自民党の森山裕幹事長に要望書を提出した。森山氏は「重く受け止める」と述べ、党地方議員の75%が署名したことを伝えられると、驚いた表情を浮かべたという。同席者が明らかにした。”
"要望書は今夏の参院選の公約に旧姓の通称使用の法制化を明記することも求めており、「わが国や自民党の歴史に禍根を残さない判断を懇願する」と記している。”
昔から言われていた「永田町の常識は世間の非常識」という言葉をリアルに感じますね。
〇🔗「便利か不便かではない」夫婦別姓求める経団連会長、関税対応で放置なら「いつか来た道」
"経団連の十倉雅和会長は22日の記者会見で、選択的夫婦別姓制度について「便利か不便かという問題の論点ではなく、われわれはやはりアイデンティティーの問題だと思っている」と述べ、「『トランプ関税が来たから置いとこうよ』『選挙があるから置いとこうよ』では、いつか来た道になるだけだ。本質をとらまえて万機公論に決すべし、で議論してほしい」と導入を急ぐべきとの考えを強調した。
経団連は昨年6月に女性が旧姓を通称使用する場合のビジネス上の弊害などを理由に早期の導入を求める提言を発表。提言が言及した「旧姓の通称使用によるトラブルの事例」の大半は解消されつつあるが、「事例集」は経団連のホームページ(HP)に掲載されたままとなっている。”
いやぁ~見事な論点ずらしですね。さすがに昨年6月に「選択的夫婦別姓」を求める提言をした経団連としては『すみません~。論拠が間違ってました~。てへ?』とは言えませんよね。
おまけに十倉会長の「『選挙があるから置いとこうよ』では、いつか来た道になるだけだ。」だとの言葉、経団連自身にブーメランですよ。何十年も女性が困っていた問題を放置していたのは経団連も共犯者ですよ。
〇🔗維新、旧姓使用の法制化に向けた法案要綱を提示 青柳氏「旧姓使用でも十分対処できる」
"日本維新の会は22日、国会内で会合を開き、今国会への提出を検討している旧姓の通称使用の法制化に向けた法案要綱を提示した。戸籍に婚姻前の姓を通称として記載し、法的効力を与えることを盛り込み、自民党の一部や立憲民主党が目指す選択的夫婦別姓制度の導入とは一線を画した。維新は各党の状況などを見極めた上で、法案として具体化するか最終判断する。”
"要綱では、「現行の戸籍制度を大きく変えることになる選択的夫婦別姓制度の導入ではなく、旧姓使用の法定化によって改姓の不利益・不都合の解消を図る」とし、住民票やパスポートなどで旧姓の単独使用ができるよう必要な措置を講じるとした。”
〇2024.04.07🔗「通称では〇〇できない」の多くは解消 夫婦別姓求める経団連指摘の弊害への各省対応一覧
"選択的夫婦別姓の早期導入を求める経団連が昨年6月公表した提言を巡っては、旧姓の通称使用によるトラブル事例と指摘した点の多くが解消されつつある。3月6日に自民党本部で開かれた「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」(WT)の会合では、提言のトラブル事例に対する各省庁の対応状況が報告された。主な内容は以下の通り。”
以下は経団連HP掲載の問題点。それに産経新聞の解説抄訳を付けました。
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① 契約・手続き等を行う際の弊害例
- 多くの金融機関では、ビジネスネームで口座をつくることや、クレジットカードを作ることができない。⇒銀行の約7割が旧姓名義による口座開設対応済。クレジットカード大手5社のうち1社で旧姓使用可能。
- クレジットカードの名義が戸籍姓の場合、ホテルの予約等もカードの名義である戸籍姓にあわせざるを得ない。⇒クレジットカード大手5社のうち1社で旧姓使用可能。
- 通称では不動産登記ができない。⇒不動産登記規則の改正により旧氏併記が可能となっている。
- 契約書のサインもビジネスネームでは認められないことがある。⇒ビジネスネームで契約書にサインしても、民法上はその契約力に何ら問題はない。
- 役員就任時の法人登記の際、旧姓の併記は可能ではあるが、旧姓を証明するために戸籍抄本が必要である。⇒商業法人登記においては、会社の役員等について会社の代表者からの申し出により旧氏を併記することが可能となっている。
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② キャリアを積むうえでの弊害例
- 研究者は、論文や特許取得時に戸籍上の氏名が必須であり、キャリアの分断や不利益が生じる。⇒姓が変わった研究者は、論文の執筆者名において、旧姓の併記、注釈等で対応することが可能となっている。
- 国際機関で働く場合、公的な氏名での登録が求められるため、姓が変わると別人格としてみなされ、キャリアの分断や不利益が生じる。⇒第5次男女共同参画基本計画では、国際機関の専門職に女性がより多く参画することにより国際的な貢献に積極的に努めること、国際機関への就職支援を強化することを盛り込んでいる。
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③ 海外に渡航する際の弊害例
- 社内ではビジネスネーム(通称)が浸透しているため、現地スタッフが通称でホテルを予約した。その結果、チェックイン時にパスポートの姓名と異なるという理由から、宿泊を断られた。
- 海外ではセキュリティが強化されており、公的施設のみならず民間施設等においても、入館時に公的IDの提示を求められる。その際、ビジネスネームが記載されている名簿と、公的ID上の名前が異なるとゲートを通れない。そのため、いつも結婚前の古いパスポートを持ち歩き、説明・証明するのに時間を要する。
- 空港では、パスポートのICチップのデータを読み込むが、そこに旧姓は併記されていない。よって、出入国時にトラブルになる。
- ⇒昭和34年から、旅券(パスポート)の券面にカッコ書きで旧姓を併記する取り組みをしているが、券面に旧姓の説明がなかったので令和3年4月から顔写真ページに「旧姓」の説明を付け加え、各国政府にその仕様変更を通知した。
- ・出入国の現場で説明を求められた際に活用いただけるよう、旧姓併記の旅券を申請した方に「別名併記リーフレット」を英文を付した形で配布している。
- ・国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)の国際規格でも、①旅券の券面(VIZ:可視検査領域)はある程度各国の裁量で旅券名義人の氏名を記載でき、わが国の旅券でも申請者の求めに応じて旧姓も併記できるが、②MRZ(機械読取領域)およびICチップには、各国で定められた「法律上の氏名」を記載する必要がある。わが国については、戸籍は日本国民について編成され、日本国籍も公証する唯一の制度であるから、旅券法第3条の規定により、旅券の申請に際して戸籍謄本の提出を求め、日本国民であることや申請者の氏名等を確認し、戸籍に基づいて旅券を作成している。
- ・なお、旅券の旧姓併記をめぐり、3年4月以降に発生した海外でのトラブルの事例について、これまでのところ在外公館からの報告はない(外務省)
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④ プライバシーの侵害
- 民間企業において、結婚・離婚に伴う改姓手続きにおいて、一定範囲で届け出が必要となり、その情報の取り扱いにおける保護範囲も不明瞭で、プライバシーの侵害につながりかねない。⇒民間で取り組むべき課題(該当省庁なし)