「クルド系とされるトルコ国籍の方々、この人たちが特定の地域に集まって住むようになっている。そこでは日常生活のマナーに違反するなんていう程度ではない、コンビニや公園に集まっての集団迷惑行為、無免許、暴走運転、人身事故、関連する事件が頻発して、その地域では怒りが頂点に達している」
十二月十日、衆議院予算委員会で埼玉県川口市を地元とする自民党・新藤義孝議員はこう訴えた。令和五年七月、川口市医療センターに百人余りのクルド人が集まって騒動になって以来、SNSなどで論議されてきたが、「怒りが頂点に達している」という悲痛な地元の声が国政に届けられたと言える。
この国会質問と前後して、埼玉で女子中学生に性的暴行を加え有罪判決を受けた在留クルド人が、執行猶予中に別の少女を暴行し、逮捕・起訴されている事実が判明、川口の問題は文字通りの治安問題となっている。
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なぜこんなことが起こるのか。クルド人が川口市周辺に集住している原因は「ビザの免除措置や難民認定の悪用」にあると新藤議員は指摘している。
日本は現在七十一カ国とビザ免除を取り決め、トルコとの間でもこの「ビザなし渡航」が行われている。航空券とパスポートさえあれば、観光と称して三カ月の短期滞在資格で日本に入国できる。
その三カ月の間に難民認定を申請すれば、その申請手続き中は特定活動という在留資格で滞在でき、一回目の手続き後に限っては就労も可能となる。通常は再度の審査で不認定となると収容令書が発付され退去強制手続きが始まるのだが、大抵は不認定の決定に対して不服申し立てがなされ、すぐに強制退去はされず「仮放免」となる。
この「仮放免」が問題で、これまでは不服申請は何度でも可能で一回の審査期間が二年余りだったため、六回も七回も申請を繰り返して二十年の仮放免状態というケースもあったという。しかし、仮放免が二度目となると原則的に就労不可となるため多くはそのまま所在不明となり、不法在留・不法就労となっていた。
難民と言いながら、要は「出稼ぎ」だったと言える。この十五年間で難民申請したトルコ国民(国籍)は約九千七百人でその大半がクルド人だが、難民申請を受理されたのはたった一人でしかなかった。トルコ大使もその事実を認めている。
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政府は難民申請が三回目以降には強制送還可能とする法改正をしたり、入国もビザ免除ではなく、事前審査を必要とする世界各国が採用している電子渡航システムの導入を準備しているが、実はそうした対策は問題対応の一部でしかない。
わが国は「外国人材の受け入れと共生」(骨太の方針2024)を掲げながら、そもそも、外国人の出入国や在留者の処遇をどうするのかという「外国人政策」が存在しない。そのため、「移民」という言葉を使わないだけで、在留外国人は今や三百五十八万人余りと増え続け、四十年後には人口の十人に一人が外国人になるとの予測すらある。在留資格も十年前に永住資格を緩めた結果、永住中国人が十万人から一挙に三十万人に増加するという杜撰な措置がなされた。どこまで「外国人材」を受け入れるのか。その政策理念が明らかにならないまま外国人が増加していく。国家の有り様として異常と言う他ない。
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その一方、新聞もテレビも外国人が起こした問題はあまり取り上げず、人権や差別問題としてだけ強調する傾向にある。新藤議員の質問を取り上げたのは産経だけで朝日、読売、毎日、日経は一行も取りあげなかった。この国は外国人の人権には敏感だが、外国人によって起こされる問題にはあまりにも無関心と言える。こんなことをしていると第二、第三の川口が起こることは必定である。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)
〈『明日への選択』令和7年1月号〉